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HACCPとは?食品衛生管理の基礎から実践までを解説

社会

「HACCPってよく聞くけど、実際何?」「食品を扱うなら知っておくべき?」そんな疑問をお持ちのあなたへ。HACCPは、食品の安全を守るための衛生管理システム。この記事では、HACCPの基礎から導入メリット、義務化の背景、具体的な手順まで、分かりやすく解説します。事例も交えながら、HACCP導入のポイントが分かります。食品工場、飲食店、食品販売店など、食品に関わる全ての方必見の内容です。

  1. 1. HACCPとは
    1. 1.1 HACCPの定義
    2. 1.2 HACCPの目的
    3. 1.3 HACCPの7原則12手順
      1. 1.3.1 HACCPの7原則
      2. 1.3.2 HACCPの12手順
  2. 2. HACCP導入のメリット
    1. 2.1 食中毒リスクの低減
    2. 2.2 食品の安全性の向上
    3. 2.3 ブランドイメージの向上
    4. 2.4 取引先の拡大
    5. 2.5 経営の効率化
  3. 3. HACCP導入の義務化
    1. 3.1 HACCP義務化の背景
    2. 3.2 HACCP義務化の対象
    3. 3.3 HACCP義務化への対応
      1. 3.3.1 1. 経営者によるリーダーシップ
      2. 3.3.2 2. HACCPに精通した人材の育成
      3. 3.3.3 3. 施設設備の確認と改善
      4. 3.3.4 4. 食品の製造工程の分析
      5. 3.3.5 5. 危害要因特定と管理基準の設定
      6. 3.3.6 6. モニタリングの実施
      7. 3.3.7 7. 記録の保管
      8. 3.3.8 8. 検証
  4. 4. HACCP導入の流れ
    1. 4.1 1. 経営者の意識改革
    2. 4.2 2. HACCPに精通した人材の育成
    3. 4.3 3. 施設設備の確認と改善
    4. 4.4 4. 食品の製造工程の分析
    5. 4.5 5. 危害要因特定と管理基準の設定
    6. 4.6 6. モニタリングの実施
    7. 4.7 7. 記録の保管
    8. 4.8 8. 検証
    9. 4.9 9. 改善
  5. 5. HACCP導入事例
    1. 5.1 事例1:食品工場A社(冷凍食品製造)
      1. 5.1.1 1. 危害要因の特定
      2. 5.1.2 2. 管理基準の設定
      3. 5.1.3 3. モニタリング方法
      4. 5.1.4 4. 改善措置
      5. 5.1.5 導入効果
    2. 5.2 事例2:飲食店B店(和食店)
      1. 5.2.1 1. 危害要因の特定
      2. 5.2.2 2. 管理基準の設定
      3. 5.2.3 3. モニタリング方法
      4. 5.2.4 4. 改善措置
      5. 5.2.5 導入効果
  6. 6. HACCPに関するよくある質問
    1. 6.1 Q1:HACCPは中小企業でも導入できますか?
    2. 6.2 Q2:HACCP導入にはどれくらいの費用がかかりますか?
    3. 6.3 Q3:HACCPの認証制度はありますか?
  7. 7. まとめ

1. HACCPとは

HACCP(ハサップ)とは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとった言葉で、日本語では「危害要因分析重要管理点」と訳されます。これは、食品を製造する過程で発生する可能性のある食中毒などの危害を予測し、その防止のための重要管理点を特定して、継続的に管理することで、製品の安全性を確保する衛生管理の手法です。

従来の食品衛生管理が、最終製品の抜き取り検査や工場の衛生状態の確認を中心としていたのに対し、HACCPは、製造工程のあらゆる段階で危害要因を予測し、あらかじめ対策を講じるという、より積極的な衛生管理手法と言えます。1960年代にアメリカで宇宙食の安全性を確保するために開発され、その後、世界各国で食品衛生管理の国際基準として広く普及しています。

1.1 HACCPの定義

HACCPは、Codex委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)によって、以下のように定義されています。

この定義から、HACCPは以下の3つの要素から成り立っていることが分かります。

  1. 危害要因の分析:製品の製造工程において、考えられる生物学的、化学的、物理的な危害要因を特定し、その程度を評価すること。
  2. 重要管理点(CCP)の決定:特定された危害要因を管理するために特に重要な工程を決定すること。
  3. 管理基準の設定と監視:CCPにおいて、危害要因の発生を防止または許容レベルまで低減させるために、管理基準とその監視方法を設定すること。

1.2 HACCPの目的

HACCPを導入する目的は、一言で言えば、食品の安全性の確保です。具体的には、以下の3つが挙げられます。

  1. 食中毒などの食品危害の発生を防止する。
  2. 食品の安全性を向上させることで、消費者の健康を保護する。
  3. 食品の安全に対する信頼性を向上させることで、食品産業の発展に貢献する。

1.3 HACCPの7原則12手順

HACCPを効果的に運用するために、Codex委員会は、HACCPの7原則12手順を定めています。7原則はHACCPシステムを構築するための基本的な考え方であり、12手順は7原則を実現するための具体的な手順を示したものです。

1.3.1 HACCPの7原則

  1. 危害要因分析の実施
  2. 重要管理点(CCP)の決定
  3. 管理基準の設定
  4. CCPモニタリング方法の設定
  5. 改善措置の設定
  6. 検証方法の設定
  7. 記録・文書化

1.3.2 HACCPの12手順

手順内容
1HACCPチームの編成
2製品の説明
3意図する用途の確認
4フローダイアグラムの作成
5フローダイアグラムの現場確認
6危害要因分析の実施(原則1)
7重要管理点(CCP)の決定(原則2)
8管理基準の設定(原則3)
9CCPモニタリング方法の設定(原則4)
10改善措置の設定(原則5)
11検証方法の設定(原則6)
12記録・文書化(原則7)

これらの原則と手順に基づいてHACCPを導入することで、食品の安全性を効果的に管理することができます。詳細については、厚生労働省のウェブサイトなどを参照してください。

参考資料:HACCPに関する情報(厚生労働省)

2. HACCP導入のメリット

HACCPを導入することで、食品事業者には様々なメリットがあります。ここでは、主なメリットとして、食中毒リスクの低減、食品の安全性の向上、ブランドイメージの向上、取引先の拡大、経営の効率化の5つについて解説します。

2.1 食中毒リスクの低減

HACCPは、食品製造の工程において、危害要因を分析し、その危害要因を排除または減少させるための管理基準を定めることで、食中毒のリスクを低減させることができます。従来の抜き取り検査では、製品の安全性にばらつきが生じる可能性があり、また、検査に時間がかかるため、出荷前に結果がわからないといった問題点がありました。しかし、HACCPを導入することで、製造工程の各段階で継続的に監視・記録を行うため、問題が発生した場合でも、迅速に原因を特定し、適切な対策を講じることが可能となります。その結果、食中毒の発生を未然に防ぐことができるようになり、消費者の安全を守ることに繋がります。

2.2 食品の安全性の向上

HACCPは、科学的な根拠に基づいた国際的に認められた衛生管理手法であるため、HACCPを導入することで、食品の安全性をより高いレベルで確保することができます。HACCPでは、製造工程におけるあらゆる危害要因を特定し、そのリスクを評価することで、より効果的な衛生管理計画を策定することが可能となります。これにより、食中毒のリスクを低減させるだけでなく、食品の品質劣化や異物混入といった問題の発生も抑制することができます。結果として、消費者に安全で高品質な食品を提供することができるようになります。

2.3 ブランドイメージの向上

HACCPの導入は、企業のブランドイメージ向上に大きく貢献します。近年、食の安全に対する消費者の意識はますます高まっており、HACCP認証を取得している企業は、消費者に安心感と信頼感を与えることができます。消費者は、HACCP認証マークを表示した商品を選ぶことで、その食品が安全に配慮して製造されたものであると認識し、安心して購入することができます。また、HACCP導入による衛生管理の強化は、企業の社会的責任を果たすことにもつながり、企業イメージの向上に繋がります。企業は、HACCPを導入し、その取り組みを積極的に発信することで、消費者の信頼を獲得し、ブランドイメージを高めることができます。

2.4 取引先の拡大

HACCPの導入は、取引先の拡大にも繋がる可能性があります。近年、食品業界では、HACCPを導入していることが取引の条件となるケースが増えてきています。特に、大手食品メーカーやスーパーマーケットなどを中心に、取引先に対してHACCP認証の取得を義務付ける動きが強まっています。これは、食品の安全に対する意識の高まりに加え、HACCPを導入している企業は、衛生管理体制が整っているという信頼感があるためです。そのため、HACCPを導入することで、新たな取引先の開拓や既存の取引先との関係強化に繋がる可能性があります。また、HACCP導入による衛生管理の向上は、製品の品質向上にも繋がり、結果として、より多くの顧客を獲得することに繋がります。このように、HACCP導入は、企業の成長を促進する上で重要な要素の一つとなっています。

2.5 経営の効率化

HACCP導入は、一見するとコストがかかるように思えますが、長期的には経営の効率化に繋がります。HACCPを導入することで、以下のような効果が期待できます。

効果内容
無駄なコストの削減HACCP導入により、工程の改善や記録の簡素化などが図られ、業務の効率化が期待できます。その結果、人件費や時間的コストの削減に繋がり、経営の効率化に貢献します。
生産性の向上HACCP導入による衛生管理の徹底は、製品の品質向上に繋がり、不良品の発生率を抑制することができます。また、問題発生時の原因究明や対策が迅速に行えるようになるため、生産ラインの停止時間を減らすことができます。これらの結果、生産性の向上に繋がり、より多くの製品を効率的に生産することが可能になります。
リスク管理の強化HACCPは、食品の安全に関するリスクを事前に予測し、予防するためのシステムです。HACCPを導入することで、企業は、食品の安全に関するリスクを体系的に管理し、未然に防ぐための対策を講 seじるこ seとができます。これにより、企業は、食中毒などのリスク発生による損失を最小限に抑えることができます。

このように、HACCP導入は、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な視点に立った経営の効率化に大きく貢献します。食品関連事業者は、HACCP導入のメリットを理解し、積極的に導入を進めていくことが重要です。

これらのメリットを踏まえ、HACCP導入を検討してみてはいかがでしょうか?

参考資料:
厚生労働省:HACCPに関する情報

3. HACCP導入の義務化

HACCPは、食品事業者にとって、もはや任意の取り組みではありません。近年、世界的な食品安全の意識の高まりや、国内における食中毒発生状況を踏まえ、HACCPをベースとした衛生管理の手法が義務化されました。ここでは、HACCP義務化の背景、対象事業者、そして対応について詳しく解説します。

3.1 HACCP義務化の背景

HACCP義務化の背景には、大きく分けて以下の点が挙げられます。

  • グローバルスタンダード化:国際的にHACCPは食品衛生管理のスタンダードとして広く普及しており、国際食品規格委員会(コーデックス委員会)でも推奨されています。日本も国際的な基準に合わせる形で、HACCPを導入しました。
  • 消費者意識の変化:食の安全に対する消費者の意識は年々高まっており、企業に対してより高度な衛生管理が求められています。HACCP導入は、消費者の信頼獲得に不可欠な要素となっています。
  • 食中毒事件の発生:依然として食中毒事件は発生しており、その対策は喫緊の課題です。HACCPによる予防的な衛生管理システムの構築が求められています。

3.2 HACCP義務化の対象

日本では、食品衛生法の改正により、原則としてすべての食品事業者がHACCPに基づいた衛生管理計画を作成・実施することが義務付けられました。これは、食品を扱うあらゆる事業者が対象となります。

  • 食品製造業
  • 飲食店
  • 食品販売業
  • 給食施設

ただし、規模や業種によっては、簡素化された衛生管理が認められる場合があります。例えば、小規模な飲食店では、HACCPの考え方を踏まえた簡易なマニュアルを導入することで対応が可能です。

3.3 HACCP義務化への対応

HACCP義務化に対応するためには、以下のステップを踏む必要があります。

3.3.1 1. 経営者によるリーダーシップ

HACCP導入は、全従業員を巻き込んだ取り組みが必要です。そのため、経営者が率先して導入を推進し、従業員の意識改革を促すことが重要となります。

3.3.2 2. HACCPに精通した人材の育成

HACCPの仕組みを理解し、現場で指導できる人材が必要です。従業員への研修などを実施し、HACCPに関する知識やスキルを習得させましょう。

3.3.3 3. 施設設備の確認と改善

HACCPの基準を満たすために、施設設備の確認と必要な改善を行いましょう。例えば、温度管理の徹底や、清掃・消毒方法の見直しなどが挙げられます。

3.3.4 4. 食品の製造工程の分析

自社の製造工程における危害要因を特定し、そのリスクを評価します。この工程がHACCP導入の基礎となります。

3.3.5 5. 危害要因特定と管理基準の設定

特定した危害要因に対して、具体的な管理基準を設定します。例えば、「加熱温度を75℃以上で1分間保持する」といった具体的な基準を設定します。

3.3.6 6. モニタリングの実施

設定した管理基準が守られているか、定期的に監視する必要があります。記録を残すことで、問題発生時の迅速な対応が可能になります。

3.3.7 7. 記録の保管

モニタリング結果やHACCPに関する記録は適切に保管する必要があります。これらの記録は、問題発生時の原因究明や、改善策を検討する際に役立ちます。

3.3.8 8. 検証

HACCPシステムが適切に機能しているか、定期的に検証する必要があります。必要に応じて、計画の見直しや改善を行いましょう。

HACCP導入は、食中毒のリスク低減だけでなく、食品の品質向上やブランドイメージ向上にもつながります。義務化に対応するだけでなく、企業価値を高めるための投資と捉え、積極的に取り組んでいきましょう。

参考資料:

4. HACCP導入の流れ

HACCPを導入する際の流れは以下の通りです。各工程において、時間をかけて丁寧に取り組むことが重要です。

4.1 1. 経営者の意識改革

HACCP導入を成功させるためには、まず、経営者自身がHACCPの重要性を理解し、導入の必要性を強く認識することが不可欠です。食品の安全に対する意識を高く持ち、積極的にHACCP導入を推進していく姿勢が求められます。従業員へのHACCPの重要性についての教育や、導入に向けた環境整備なども経営者の重要な役割です。

4.2 2. HACCPに精通した人材の育成

HACCP導入・運用のためには、専門的な知識を持った人材が必要です。従業員に対してHACCPに関する研修を実施し、HACCPの7原則12手順を理解させ、実践できる人材を育成します。外部の専門機関の研修を活用することも有効です。従業員一人ひとりがHACCPに対する意識を高め、主体的に取り組むことが重要です。

4.3 3. 施設設備の確認と改善

HACCP導入前に、現状の施設設備がHACCPの基準を満たしているかを確認する必要があります。必要に応じて、施設の改修や設備の導入を行い、衛生的な食品製造環境を整えましょう。特に、交差汚染の防止や温度管理の徹底は重要なポイントです。清掃や消毒の頻度を見直したり、記録を残す仕組みを導入することも有効です。

4.4 4. 食品の製造工程の分析

食品の製造工程を詳細に分析し、危害要因を特定する必要があります。原材料の入荷から、製造、加工、包装、出荷までの各工程における危害要因を洗い出し、管理対策を検討します。この工程は、HACCP導入の基礎となる重要なプロセスです。フローダイアグラムなどを用いて視覚的に整理すると、より効果的に分析できます。

4.5 5. 危害要因特定と管理基準の設定

分析した製造工程ごとに、発生する可能性のある生物学的、化学的、物理的な危害要因を特定します。そして、その危害要因を「排除」「低減」するために、具体的な管理基準を設定します。管理基準は、温度、時間、濃度などを数値で明確に定めることが重要です。例えば、「加熱調理は中心温度75℃以上で1分間以上行う」といった具体的な基準を設定します。

4.6 6. モニタリングの実施

設定した管理基準が適切に守られているかを確認するために、定期的なモニタリングを実施します。温度計やタイマーなどを用いて、 critical control point における測定を行い、記録します。モニタリングは、HACCPシステムが正常に機能しているかを確認する上で非常に重要です。記録は、後 traceability の確保にも役立ちます。

4.7 7. 記録の保管

HACCP導入後は、モニタリングの結果や、改善策の実施状況など、様々な記録を適切に保管する必要があります。これらの記録は、問題発生時の原因究明や、HACCPシステムの継続的な改善に役立ちます。また、行政への報告や、取引先からの要求にも対応できるよう、体系的に記録を管理することが求められます。電子データでの記録も有効です。

4.8 8. 検証

HACCPシステムが適切に機能しているかを定期的に検証します。モニタリングデータや記録類を分析し、問題点があれば改善策を検討します。検証は、HACCPシステムの有効性を確認し、より確実な食品安全管理体制を構築するために不可欠なプロセスです。外部の専門家による監査なども有効な手段です。

4.9 9. 改善

HACCPは、継続的に改善していくことが重要です。検証の結果に基づき、HACCPシステムに不備があれば、改善策を検討し、実行します。新しい危害要因が発見された場合や、法改正など外部環境の変化にも対応していく必要があります。HACCPシステムを常に最適な状態に保つことで、より高いレベルの食品安全を目指します。

これらのステップを踏むことで、HACCPを円滑に導入し、安全な食品を提供することができます。HACCP導入は、企業の信頼獲得、ブランドイメージ向上にもつながります。積極的に取り組んでいきましょう。

参考資料:

5. HACCP導入事例

HACCP導入は、食品を扱うあらゆる事業者にとって重要な取り組みです。ここでは、具体的なHACCP導入事例を通して、その実践方法と効果について詳しく見ていきましょう。

5.1 事例1:食品工場A社(冷凍食品製造)

従業員数100名の中堅食品工場であるA社は、冷凍食品の製造ラインにおいてHACCPを導入しました。ここでは、特に重要な工程である「加熱調理工程」におけるHACCP導入プロセスを具体的に示します。

5.1.1 1. 危害要因の特定

A社は、加熱調理工程における危害要因として、以下の2点を特定しました。

  • 菌の生存:加熱不足により、製品中に食中毒菌が生存する可能性。
  • 加熱ムラ:製品内部まで十分に加熱されず、品質が低下する可能性。

5.1.2 2. 管理基準の設定

特定した危害要因に対して、以下の管理基準を設定しました。

危害要因管理基準
菌の生存製品中心部を75℃で1分間以上加熱する
加熱ムラ加熱炉内の温度を一定に保ち、製品を均一に回転させる

5.1.3 3. モニタリング方法

  • 製品中心温度の測定:毎時、製品中心部の温度を測定し、記録する。
  • 加熱炉内温度の記録:加熱炉内に設置した温度計で、常時温度を監視し、記録する。

5.1.4 4. 改善措置

  • 製品中心温度が基準を満たさない場合、加熱時間を延長する。
  • 加熱炉内温度が設定範囲から逸脱した場合、設備の点検・修理を行う。

5.1.5 導入効果

HACCP導入により、A社では以下の効果が見られました。

  • 製品の安全性が向上し、顧客からの信頼獲得につながった。
  • 工程管理が厳密化され、品質の安定化を実現した。
  • 従業員の衛生意識が高まり、食中毒発生リスクの低減に貢献した。

5.2 事例2:飲食店B店(和食店)

従業員数10名以下の小規模な和食店であるB店では、食材の保管から調理、提供までの全工程においてHACCPシステムを構築しました。ここでは、特に食中毒のリスクが高い「刺身の提供」に焦点を当て、HACCP導入の具体例を紹介します。

5.2.1 1. 危害要因の特定

B店では、刺身の提供における危害要因として、以下の3点を特定しました。

  • 寄生虫:適切な冷凍処理がされていない魚介類を使用することで、寄生虫による食中毒が発生する可能性。
  • 細菌増殖:不適切な温度管理により、魚介類に付着した細菌が増殖し、食中毒を引き起こす可能性。
  • 交差汚染:調理器具や手指を介して、他の食材から魚介類に菌が移り、汚染される可能性。

5.2.2 2. 管理基準の設定

特定した危害要因に対して、以下の管理基準を設定しました。

危害要因管理基準
寄生虫-20℃以下で24時間以上の冷凍処理がされた魚介類のみを使用する。
仕入れ時に、納品書に冷凍処理の記載があることを確認する。
細菌増殖魚介類は4℃以下の冷蔵庫で保管し、提供直前に調理する。
調理後は速やかに提供し、長時間放置しない。
交差汚染刺身専用の調理器具とまな板を使用する。
調理前には必ず手指を消毒し、調理中はこまめに手袋を交換する。

5.2.3 3. モニタリング方法

  • 冷蔵庫温度の記録:冷蔵庫内に設置した温度計で、1日2回、温度を測定し、記録する。
  • 手指消毒の確認:調理担当者は、調理前に必ず手指消毒を行い、記録を残す。

5.2.4 4. 改善措置

  • 冷蔵庫の温度が基準を満たさない場合、速やかに修理を依頼し、食材は別の冷蔵庫に移す。
  • 手指消毒が不十分な場合、再度消毒を行い、衛生教育を実施する。

5.2.5 導入効果

HACCP導入により、B店では以下の効果が見られました。

  • 食中毒のリスクが大幅に減少し、お客様に安心して食事を提供できるようになった。
  • 食材の管理や調理工程が明確化され、従業員の意識向上につながった。
  • 衛生管理の徹底により、お店の評判が向上し、新規顧客の獲得にも繋がった。

これらの事例は、HACCP導入が食品を扱うあらゆる規模の事業者にとって、食の安全を確保し、事業の信頼性を高める上で非常に有効であることを示しています。HACCPの導入は、決して容易なプロセスではありませんが、適切な計画と実行によって、大きな成果を得ることが期待できます。詳細なHACCP導入に関する情報については、厚生労働省のウェブサイトなどを参照してください。

6. HACCPに関するよくある質問

HACCPについて、よくある質問とその回答をご紹介します。

6.1 Q1:HACCPは中小企業でも導入できますか?

はい、HACCPは中小企業でも導入できます。規模の大小に関わらず、食品を扱うすべての事業者に求められる衛生管理手法です。 実際、多くの中小企業がHACCPの考え方を導入し、効果を上げています。 HACCPは、事業者の規模や業種に合わせて柔軟に対応できるシステムです。
中小企業がHACCPを導入する際には、以下の様な支援制度も活用できます。

  • HACCP導入に関する相談窓口の利用
  • HACCP導入支援事業者によるコンサルティング
  • HACCP導入費用の助成金制度

これらの制度を活用することで、中小企業でもスムーズにHACCPを導入することができます。
参考:厚生労働省 HACCPに関する情報

6.2 Q2:HACCP導入にはどれくらいの費用がかかりますか?

HACCP導入にかかる費用は、事業者の規模や業種、現状の衛生管理レベルによって大きく異なります。 主な費用項目としては、以下の様なものがあります。

  • コンサルタント費用
  • 従業員への教育訓練費用
  • 施設設備の改修費用
  • 記録用紙や温度計などの消耗品費

費用を抑えるためには、自社の現状を把握し、必要最低限の投資で済むように計画を立てることが重要です。
例えば、コンサルタント費用は、専門家に依頼する範囲を絞ったり、助成金制度を活用したりすることで削減できます。 施設設備についても、既存の設備を有効活用したり、低コストな設備を導入したりすることで、費用を抑えることができます。
HACCP導入は、費用対効果を考慮しながら進めていくことが大切です。

6.3 Q3:HACCPの認証制度はありますか?

はい、HACCPの認証制度はあります。日本では、主に以下の様な認証制度があります。

認証制度名認証機関概要
JFS-A規格一般社団法人日本食品安全マネジメント協会(JFSM)など食品安全マネジメントシステムの国際規格であるISO22000をベースに、日本の実情に合わせた規格
FSSC22000FSSC財団が認定した認証機関食品安全マネジメントシステムの国際規格

これらの認証を取得することで、自社の食品安全管理レベルの高さを対外的にアピールすることができます。 認証取得は、顧客からの信頼獲得、取引先の拡大、ブランドイメージの向上などに繋がる可能性があります。
しかし、認証取得には費用や時間、労力がかかるため、自社の経営戦略に合わせて、認証取得の必要性を判断する必要があります。

7. まとめ

この記事では、HACCPの概要から導入のメリット、義務化、導入の流れ、事例、よくある質問まで解説しました。HACCPは、食品の安全性を確保するための重要な衛生管理手法です。2021年6月からはHACCPに沿った衛生管理が制度化され、すべての食品事業者に求められています。HACCPを導入することで、食中毒のリスク低減、食品の安全性の向上、ブランドイメージの向上、取引先の拡大など、多くのメリットがあります。本記事を参考に、HACCP導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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